研究
平成21年度の研究主題
体力の低下をくい止める体育科学習指導
~運動効果の意識をもって取り組み体ほぐし運動を一単位時間に位置づ け運動量の確保と楽しさを味わわせる場を設定した授業を通して~
(本年度検証単元:表現・リズム運動系、水泳、体つくり運動、保健領域の学習)
Ⅰ 主題設定の理由
近年の科学技術の発展に伴い、生活が便利になったことによって、日常生活における身体活動が減少し、児童も塾通いやお稽古ごと、テレビゲームなどの屋内遊びの影響とで、運動離れが増える傾向にあり、体力や運動能力は低下傾向にある。
小学校の体育の目標は、「心と体を一体としてとらえ、適切な運動の経験と健康・安全についての理解を通して、運動に親しむ資質や能力を育てるとともに、健康の保持増進と体力の向上を図り、楽しく明るい生活を営む態度を育てる。」と学習指導要領に示されている。この目標の達成に向けて、様々な指導上の工夫がなされたし、楽しさや喜びを味わわせることを中心においた様々な学習指導の工夫は、その主流である。そして、仲間との話し合い活動は、好ましいコミュニケーションを育て、協力することの大切さを学ばせることができた。
また、体力・運動能力に関しては、このような学習を通して、「子どもたちは進んで運動に取り組むだろう。」その結果として「体力はおのずと向上するであろう。」と考えてきた。しかし、男女ともに昭和60年(1985年)頃から体力・運動能力は低下傾向にある。(図1)本校においても、1年生から6年生までの男女の新体力テスト(8項目)96のデータの内、71のデータが、全国平均値以下という低い数値となっているのが現状である。しかし、昨年度から比べるとプラス7つのデータが全国平均を上回っている。「早寝・早起き・朝ご飯」などの基本的生活習慣を調査した飯塚市生活実態調査結果をもとに算出した生活習慣の乱れている傾向にある児童も多いことがわかった。基本的生活習慣を身につけるために、保健領域で健康の大切さや、自分の心や体に関心を持たせていく。このことから、体力(健康)と運動能力の相互依存関係をふまえ、体力(健康)の低下傾向をくい止める体育科の学習指導について研究する必要性を感じ、本主題を決定した。
Ⅱ 主題の意味1
主題「体力の低下をくい止める体育科学習指導」
(1) 「体力」とは
「体力」は、防衛体力と行動体力とに分類される。行動体力は、図3体力の分類表のように、 児童が運動を発現する能力としての筋力と瞬発力、運動を持続する能力としての全身持久力と筋持久力、運動を調整する能力としての調整力(平衡性、巧緻性、敏捷性)、行動するための関節の可動範囲の能力としての柔軟性の8つの体力因子に分けられる。
(2) 「体力の低下をくい止める」運動内容と各体力因子との関係について
児童の体力が低下傾向にある現在、楽しさや喜びを味わわせることに偏重し、その副産物的に運動が好きになり、活動が活発になり、体力も向上するという考えだけでは、低下傾向は続くであろうし、直接体力の向上をめざす、上学年の体つくり運動の領域だけで体力を高めようとすることは困難である。そこで、他の運動領域でも体力の向上に視点をあてて取り組まなければならないと考える。表1は、運動・スポ-ツの種類と各体力因子におよぼす効果との関係を表したものである。
この表1から、運動の効果は、体力因子をそれぞれ伸ばし、人間の健康的な身体つくりに好影響を与えることが伺える。表1をもとに、小学校体育における運動内容と各体力因子との関係を考慮し、本校独自に体力の運動効果を分類したものが表2である。体力の向上は、学習指導要領の、各運動領域において十分図れることがわかり、低下傾向にある今こそ、子どもたちの体力の向上に着目して、指導していかなければならないと考える。
(3)「体力の低下をくい止める体育科学習指導」とは、運動の特性に触れた楽しさや喜びを味わわせるとともに、体力の向上を配慮した体育の学習指導のことである。
2 副主題「運動効果の意識をもって取り組み体ほぐし運動を一単位時間に位置づけ運動量の確保と楽しさを味わわせる場を設定した授業を通して」
(1)「運動効果の意識をもって」とは
今までの小学校の体育の学習をふり返ってみると、単元の導入時に運動と出会わせるときに、運動のルールや楽しさ及び学習の流れについては確認していた。しかし、運動が直接体に及ぼす好影響については伝えてはいなかった。
運動することによって、どの体力因子が伸びるかを児童に意識付けをすることによって、運動への積極的な動機付けへとしたい。次頁の表3は1年生から6年生、こすもす学級、たんぽぽ学級までの体育科の年間指導計画である。これは、単元の効果的な体力因子を表1と表2を分析し、明記したものである。つまり、単元導入時に、このカリキュラムにしめす体力因子を児童に伝えるという運動効果の意識づけは、例えていうならば、「ご飯を食べたら大きくなる。」「外から帰ってうがいをすると風邪の予防になる。」「食べたら歯を磨くとむし歯を防げる。」「かけ算をすれば買い物に便利。」「読書は心が豊かになる。」ということと同様な考えである。
これらをふまえ、中学校や高等学校において、体力の正しい高め方のスキルを身に付ける段階に発展していくことにより、体力向上を図れる可能性が出てくるのではないだろうか。
つまり、小学校の段階で運動効果を意識づけることは、体力の低下をくい止める 最低条件ととらえている。
(2)「体ほぐし運動を単位時間へ位置づけた学習」について
1)「体ほぐし運動」とは
体ほぐしが平成11年の学習指導要領に入ってきた背景は次の通りである。
①体力や運動能力が低下傾向にある。
②運動への取り組みがある子どもと取り組みのない子どもに二極化して いる。
③運動や体を動かすことにスイッチオンできていない子どもが多くいる。
そのためにいろいろな手軽な運動や律動的な運動を行い、体を動かす楽しさや心地よさを味わえるようにすることである。
ねらいとしては次のアからウの3点がある。
│ ア 自分や仲間の体や心の状態に気づく。│
│ イ 体の調子を整える。│
│ ウ 仲間と交流する。│
上記のねらい達成のための体ほぐしの授業の位置づけも重要であり、次のAからDの4つのスタイルに分けられる。本年度は、AからDのいずれかのスタイルを選択し、さらに、毎時間の運動の導入として位置づけ実践していく。
│A 単独単元として行う。│
│B 体力を高める運動と組み合わせて行う。│
│C 各種運動領域の導入として行う。│
│D 基本の運動に含めて行う。│
内容構成の視点(文科省資料)としては次のようにあげられている。
○ 児童にとって優しい運動(手軽にできる運動)
○ 児童にとって優しい人間関係を体験できる運動
(仲間との関わり合いやふ れ合いによって体験できる運動であること。)
○ 児童にとって新たな発見や気付きがある運動。
(ワクワクするような体の感覚への発見や気付きがある運動であること)
○ リズミカルな弾む動き、スリリングな動き、ゲームなどの動的な運動
(様々な身のこなしや体の感覚を持っている運動であること)
○ 力を抜くこと、力を出すこと、その加減がわかる運動
(力を出すための体の使い方や運動の心地よさがわかるような運動であること)
これらの視点をふまえ、どんな内容構成にすればねらいが達成できるかを考
えて実践する必要がある。
2)「体ほぐし運動を単位時間へ位置づけた学習」の必要性とは
新体力テストの結果と生活実態調査の結果がおもわしくないのは、本校のみならず全国的な課題であることは承知の通りである。
児童精神医学の先行指標であるCBCL≪Child Behavir Check List ≫による分析結果を平成14年(2002)3月発表の文部科学省の「児童生徒の心の研究と生活習慣に関する調査結果」において、次のようにまとめている。(関連の図2)
① 心の健康の支援は、学校では決して不健康な状態を見つけ出そうとはせずにヘルスポロモーション(より健康に)の理念に乗っ取り、児童の発育発達の促進を支援する。教科指導では、特に低学年では成功感を体験できるように配慮することが重要な要となる。
② 生活習慣は、心の健康と生活習慣は相互関係がある。よって、本来家庭の役目であった基本的生活習慣の定着は、今も不可欠ではあるが、心の健康増進という学校の任務の視点から、生活習慣の改善と自己管理力を身につけさせることは児童にとって将来的にも重要。
③ すっきり目が覚めることは心の問題や、生活習慣との関連にも重要であり、運動しているものほど「すっきりめがさめた」ものが多いことがわかった。
また、すっきりめざめたものの方が朝食をとっているものが多いこと。就寝時刻、夕食時刻、夜更かしをしないことにも同様の結果であった。
④ 運動の日常生活への好影響として、心の問題や、生活習慣との関連にも同じく重要であり、運動をしている者ほど、「宿題や読書」、「家族、友人などと会話する」など日常生活にまで良い影響を与えていることが小中高で共通してみられた。
③④での運動は体育以外の運動であり、運動に対する意識の目覚めた児童が、積極的に友達との遊びやスポーツクラブへの参加することととらえる。このことから、低学年から、運動に対する意欲や興味関心を身につけさせるためにも、友達との交流は大切である。自分や友達体や心に気付くこと、自分の体の調子を整えることは自己管理能力につながる。つまり、体ほぐし運動のねらいそのものである。しかし、体ほぐし運動は、5年・6年からとなっているが、低学年からの実施が大切と考えた。それに加え、毎時間の主運動に、可能な限り関連する体ほぐし運動を位置づけた。これが先に述べた「体ほぐし運動を単位時間へ位置づけた学習」の必要性である。
①②の基本的生活習慣に関する学習を保健の領域に及び低学年にも、体育のオリエンテーションとして保健の学習を位置づけることにした。また、保健の領域の学習の導入としても体ほぐしを行う事も視野に入れている。
Ⅲ 研究の目標
運動効果の意識をもって、教師及び児童が運動に取り組み、体ほぐし運動を一単位時間へ位置づけ、運動量の確保と楽しさを味わわせる場を設定した授業を通して、体力の低下をくい止める体育科学習指導を究明する。
Ⅳ 研究の仮説
一単位時間の体育の学習過程(運動領域)の中に、運動効果の意識をもって教師及び児童が運動に取り組み、体ほぐしの運動を位置づけ、運動量の確保と運動の楽しさ味わわせる場を設定すれば、体力の向上に起因し、健康を保持増進する意識と態度が育ち、基本的生活習慣をも向上することができるであろう。
Ⅴ 研究の視点
1 各運動領域における運動効果を意識し授業を行う。
2 体ほぐしを単位時間に位置づける授業改善
3 運動量を確保し、運動の楽しさを味わわせる場の設定
Ⅵ 研究の方法と計画
1 研究の内容と方法
○ 文献による理論研究
○ 実技講習
○ 検証授業による理論の実証
2 研究の計画
(1) 平成19年(2007)4月 ~ 平成22年(2010)3月
(2) 具体的な3年間の計画(検証単元および領域)
平成19年度(2007)・・ 基本の運動、ゲーム、ボール運動系、体つくり運動、保健領域をあげて、体力の向上と運動の楽しさと喜びと、基本的生活習慣の改善を図っていく。
平成20年度 (2008)・・ 器械運動系、陸上運動系、体つくり運動、保健領域をあげて、体力の向上と運動の楽しさと喜びと、基本的生活習慣の改善を図っていく。
平成21年度 (2009)・・ 体つくり運動、保健学習から新体力テスト及び、生活実態調査 を分析し指導法の効果をまとめていく。
平成19年度 全体研修授業(6年1組)
単元名「バスケットボール」 【領域:ボール運動】



